
「ととのったら人生、変わっちゃった」――年間300回サウナに通い、仕事もプライベートもサウナと共に歩んできた男が、今“日本のサウナ業界”に風穴を開けようとしている。
その名も『sauful(サウフル)』。SNSでサウナを発信する人だけが入れる、ちょっと風変わりなサウナのサブスクサービスだ。
この仕組み、実は「サウナーも嬉しい、施設も嬉しい、情報を見る人も嬉しい」という“三方よし”の近江商人状態。いったいどういうこと? 仕掛け人の株式会社タイガ 代表取締役 渡辺一輝さんに、じっくり聞いてきました!

「元花屋が始めたサウナのサービス」ってキャリア、クセ強すぎません?
――まず…失礼を承知で言いますけど、キャリアがとんでもなく異色すぎません? 花屋から食品メーカーやって、いきなりサウナ?
自分でも思います(笑)。でも原点は21歳で親友と始めた花屋ですね。建築デザインの学校を出たんですが、隣のフラワーデザインのクラスの友人と一緒に立ち上げました。
花屋っていうと小さなお店を想像するかもしれないけど、最終的には全国や海外にも展開して、30店舗ぐらいになりました。並行して、ファッションショーの装飾や、六本木ヒルズのシーズン装飾も手がけてましたね。
――ヒルズ装飾してた人が、今サウナの話してる…。ギャップエグいっすね。
さらに食品メーカーもやってました。北海道の食材を加工して、全国のスーパーに卸す事業。ゼロイチで工場立ち上げて、商品の企画から販路開拓まで全部やってたので、そこそこタフでした(笑)。

サウナが“ただの趣味”から“人生の恩人”になった瞬間
――華やかなキャリアの中で、サウナとの出会いはいつだったんでしょう?
実は、花屋を始めた頃にサウナプロデューサーの「ととのえ親方」こと松尾大さんと出会ったのがきっかけです。当時はまだ“ととのえ親方”とは名乗っておらず、普通の実業家・松尾さんでした。ある日、ご自宅に植物の納品をしたら「飯、食った?」って聞かれて(笑)。そのまま松尾さんのご自宅で蕎麦と天ぷらをご馳走になるという謎展開でした。初対面で納品に伺っただけの僕に自宅でご馳走してくれるなんて…ってビックリしましたね。
そして、その場にいた大学生が後日、サウナの本を持ってきてめちゃくちゃ熱弁してくれて。「騙されたと思って一回入ってみろ」と。本格的にハマったのはそこからですね。
――なんという展開…。ととのえ親方の懐の深さにも衝撃です。さらに、サウナに救われたご経験もあるとか?
人生のどん底期に、唯一の救いだったんです。転職してとある食品メーカーに入ったんですが、激務とストレスで体を壊してドクターストップ。薬も大量に出されましたが、「飲んだら負けだ」ってサウナだけは通い続けて。
そしたら、数ヶ月後に医者から「完治ですね」と。本当にサウナに救われたんですよ。
――まさかの“合法リハビリ”。ちなみに、最初にととのった施設ってどこだったんですか?
友人が「村長」やってる村にあるサウナです(笑)。アウトドアで、森に囲まれてて水も抜群に冷たい。初めて「これはヤバい…ととのうってこういうことか!」ってなった瞬間でした。
