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島根の温泉旅館貸切イベントにサウナバス登場。「オールナイトEXPO酒場」が仕掛ける新しい化学反応

日本三美人の湯と「壊れても燃えてもいい」薪サウナバスで、朝まで未来を語る夜が出雲にある。

6月5日(金)夜から6日(土)朝にかけて、島根県出雲市の温泉旅館「湯の川温泉 湖静荘」で「オールナイトEXPO酒場 アット島根 featuring 出雲・松江」が開催される。サウナバスに源泉かけ流しの湯、スナック形式の対話空間が一夜限り揃う、奇妙で骨太なイベントだ。

このサウナバスには、ちゃんと前史がある

近年、移動式サウナは珍しくなくなった。トラックの荷台にストーブを載せたもの、テントサウナを牽引するキャンピングトレーラーなど、「動くサウナ」は全国各地に増えている。しかしこのイベントのサウナバスは、そういった市販・レンタル品ではない。

松江市を拠点とする株式会社サカタの代表・坂田健一氏が、コロナ禍に友人と複数台購入した小型バスを、DIYで改造したものだ。観光や宿泊施設の送迎需要が激減したことで中古市場に大量に出回ったバスを「大人買い」し、それぞれ異なる用途にカスタムした。

オールナイトEXPO酒場 アット島根

「コロナの時にバスが結構、旅館の送迎で使わなくなったものが売りに出ていた。それを友達と何台か大人買いして、一つずつカスタムしていった」と坂田氏は振り返る。1台は別仕様にカスタムし、もう1台がサウナ仕様。2台で旅する、という発想から生まれた構成だ。

バスの選定にも理由がある。「小型バスのフォルムが可愛かった。普通のバスと違って、消しゴムみたいな形というか、四角くてちょん切られたようなかわいさがある」と坂田氏は言う。見た目から入るのが、いかにもDIY的だ。

熱源は電気やガスではなく「薪と炭」。煙突がバスの外に突き出た構造で、「テントサウナがバスの中に入ったような感じ」と坂田氏は表現する。定員は後部座席に5〜6人が適正で、温度を最優先に設計されている。

オールナイトEXPO酒場 アット島根
オールナイトEXPO酒場 アット島根
オールナイトEXPO酒場 アット島根

「壊れても燃えてもいい覚悟がないと、多分できないと思う」と坂田氏は言い切る。高温化を追求する過程で木材が変形するなどの試行錯誤も重ねてきた。

市販の移動式サウナが「手軽さ」を売りにするのに対し、このバスの強みは「可変性」だ。「また違う使い方がしたければ、もう一回バラして好きなようにすればいい」という思想で作られているため、毎回のイベントに合わせたアップデートが可能になっている。「田舎のなんか中年のおじさんたちがそうやって遊んでる」と坂田氏は笑うが、その遊び方の純度はかなり高い。

サウナはEXPO酒場の「仕上げ」に使う、という設計

この「オールナイトEXPO酒場 アット島根」におけるサウナバスの役割が、また独特だ。

夜通し行われる「地域の未来を語り尽くす」トークセッション・スナック形式の対話が深夜から続き、昭和歌謡ショーなどのコンテンツを挟みながら朝を迎える。そしてサウナバスに入るのは「明け方」。日の出とともに入るサウナが、一夜の締めとして機能する設計になっている。

オールナイトEXPO酒場 アット島根

「話し込んでいる時にサウナに入ると、人が散らばってしてしまうのではないかと。朝の仕上げとして、みんなで朝日を見ながら締めくくるほうが気持ちいいでしょ」と坂田氏は語る。サウナ→水風呂→外気浴という一般的な流れを提供するというより、一夜をかけて「ほどけていった体と頭」をサウナで締める、というコンセプトだ。

サウナの前には、日本三美人の湯として知られる湯の川温泉の源泉かけ流し風呂が自由に使える。群馬・川中温泉、和歌山・龍神温泉と並ぶ美人の湯で、加水・加温・循環ろ過を一切行わない湯使い。「お湯はめちゃくちゃいいんだけど、あまり知られてないんですよね」と坂田氏が率直に語るほど、ポテンシャルを十分に秘めた宿でもある。

「サウナに入って温泉を使って体を温めて、お酒をちょっと入れて、硬い話を少し柔らかくしながら頭も柔らかく」——取材中にそう整理したら、坂田氏は「そういうことですね」と即答した。

旅館を「変えない」まま、意味だけを更新する

イベントの舞台である「湖静荘」は、築地松に囲まれた出雲の静かな和風旅館だ。出雲空港から車で約5分という好立地にありながら、大規模なリノベーションを行っていない建物。

ここに「一棟貸し」という使い方を組み合わせたのがこのイベントの発想の起点だ。坂田氏はそれを「リノベーションしないリノベーション」と呼ぶ。「建物をつくり替えるのではなく、その場の意味を更新すること」が狙いで、実際にこの旅館では以前からアニメファンたちが年に一度全国から集まり、一棟貸しでコスプレをしながら夜通しアニメの話をする会が続いていた。

そのエピソードを旅館オーナーから聞いた坂田氏が「この使い方の幅を広げたい」と考えたのが、今回のイベントの出発点だ。

「こんな悪ふざけをして借りられることを表に出している旅館は、あんまりないと思う」と坂田氏は言う。

スナック形式の対話空間は、テーマごとに「ママ」役のファシリテーターが立ち、参加者がカウンターに座りながら話すという設計。地域教育、地域クリエイティブ、地方発キャリア、事業承継など7つのテーマが並列で展開する。途中参加・移動自由。お酒を飲みながら、温泉を挟みながら、気が向いたら眠って、また戻ってくる。

テーマ別スナック

地域教育|地域で“学び”はどうつくれるのか
 地域における教育実践や、学校内外の学びの可能性を探る

地域クリエイティブ|地域の価値をどう伝えるか
 クリエイターの視点から、地域に眠る価値や魅力をどう届けるかを考える

地域の“つくる産業”|ものづくり・食品のこれから
 ものづくりや食品メーカーなど、地域の“つくる現場”の課題と可能性を語り合う

地方発キャリア|島根から都市へ挑戦する若者たち
 地方出身者のキャリア選択や挑戦のリアルを語り合う

事業承継|継ぐか変えるか、その決断のリアル
 事業承継に向き合う中での葛藤や意思決定の背景などを語り合う

地域のお悩み相談|地域ビジネスの悩みをその場で壁打ち
 参加者同士で悩みを持ち寄り、課題解決のプロも交えて、その場で実践的な壁打ちを行う

地域事業者の挑戦|常識を壊した工場づくりの裏側
 西日本最大級の木造工場の建設に至るまでの背景や想いを紐解く

「真面目な話はインターネットに落ちているので、みんなそこでやってリアルに会って風呂に入って話した方が、実際胸襟も開いていい」と坂田氏は言い切る。「深夜、肩書きや名刺が外れた頃に始まる会話にこそ、本音やまだ言葉になっていないアイデアが宿る」と共催の板垣翔大氏も語っており、この夜の設計全体が「ほどける」ことを前提に組まれている。

朝は宍道湖のほとりで日の出を眺めるバードウォッチングで締まる。夜通し議論してそのまま湖畔へ、というカオスな美しさも、このイベントらしい。

「オールナイトEXPO酒場 アット島根」こんなサウナー・温浴好きに

・「ととのい」よりも「語らい」のある夜を求めている人
・移動式サウナや地方の温浴施設に関心がある人
・地域×ビジネスのリアルな文脈が気になる人
・「ととのう」より「ほぐれる」体験を求めるサウナ初心者

「島根から出ていかないと手に入らないと思っていた刺激が、実はここにある、と感じてほしい」と坂田氏は語る。都市部からの参加者にとっても、地方在住者にとっても、「田舎だからいろんなことがやりやすい」という感覚を体感できる場になりそうだ。

東京から当日入りする場合、羽田から出雲空港へのJAL便や、鉄っちゃんには嬉しい寝台特急「サンライズ出雲」という選択肢もある。移動も旅行の一部だ。

編集長

サウナは「ととのう」だけじゃなくて「溶ける」ためにもある。深夜にスナックで地域の未来について語り合い、演歌が流れ、朝日とともに薪サウナバスに入る——その設計の意図が分かった瞬間に、妙に納得してしまった。「薪と炭で燃やす、壊れてもいい覚悟」で作ったサウナって、そこだけで既にコンテンツだ。好奇心が先に立つ人、地方×ビジネスの交差点が気になる人に特に刺さるはず。

オールナイトEXPO酒場 アット島根

日時:2026年6月5日(金)12時〜6日(土)8時(オールナイト開催)
会場:湯の川温泉 湖静荘(島根県出雲市斐川町学頭1948)
定員:最大100名程度
参加費:オールナイトプラン ¥11,000(税込)、個室付 ¥18,700(税込)、学生割 ¥2,200(税込)※フィールドワーク(オプション)¥5,500(税込)
申込締切:6月4日(木)12時
申込https://expobar-izumokoseisou01.peatix.com/
詳細https://exposakaba-shimane.studio.site/

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