
石川県小松市の山間部、滝ヶ原地区に新たなサウナ施設「TAKIGAHARA SAUNA」が完成した。本プロジェクトは、世界的建築家として知られる隈研吾建築都市設計事務所が建築設計を監修、サウナ専門設計事務所のサウナイデアがサウナ設計を担当することで実現した画期的なサウナ施設である。
このサウナ施設は、単なる温浴施設を超えて「地産地消のサウナ」というコンセプトを掲げ、地域の素材・文化・自然と深く調和したサウナ体験を提供している。建築とサウナ、そして地域の恵みが融合した新しいサウナ文化の体験空間として注目を集めている。
地域の記憶を刻む素材を活用したサウナ設計
康美青の石風呂で歴史を感じるひととき
TAKIGAHARA SAUNAの最大の特徴は、地元の素材を贅沢に活用した空間設計にある。特に注目すべきは、かつて蔵などに使われていた「康美青(こうびせい)」と呼ばれる石材をくり抜いて作られた石風呂だ。この石材は長年の歴史を刻んでおり、入浴者は石が持つ時間の記憶を肌で感じることができる。


能登ヒバと地元杉が織りなすサウナ室
サウナ室には、香り豊かで耐久性に優れた能登ヒバと地元の杉材を贅沢に使用している。これらの自然素材が織りなすぬくもりは、五感に響くサウナ空間を演出し、都市生活で蓄積された思考のノイズを静かに鎮める効果をもたらす。


白山伏流水による極上の冷水浴
冷水浴には、白山の伏流水を含む地下水由来の滝ヶ原の清らかな水を使用している。この水は非常にやわらかく澄みわたっており、サウナで火照った身体と心にやさしく沁みわたる贅沢な冷水浴体験を提供する。

サウナ体験を彩る地域性あふれるオリジナルプロダクト
滝ヶ原の原風景を表現したオリジナルアロマ
TAKIGAHARA SAUNAでは、サウナ室内で使用するオリジナルアロマも地域性にこだわって開発された。石川県産のユズ、クロモジ、スギ、ラバンディンを中心に、ベルガモット、ユーカリラディアータ、ホーウッド、ヒノキ、シダーウッド、オークモスなどの精油を丁寧に調香している。
このアロマのテーマは「滝ヶ原の原風景」。ヒバ材の空間と調和し、深く息を吸い込んだとき、まるで苔むす岩肌や杉林を歩いているような感覚を味わうことができる。単なる芳香ではなく、この土地とつながる呼吸を意図した設計である。

身体を整えるオリジナルサウナ飯とドリンク
サウナ体験をより豊かにするため、オリジナルのサウナ飯「チキンティカマサラ」も提供される。クミン、カルダモン、コリアンダーなどのスパイスは、単なる辛さではなく腸や自律神経にやさしく働きかけ、サウナで整った内臓をさらに活性化させる効果を狙っている。
さらに、日本古来の薬草である「よもぎ」を活用したオリジナルサウナドリンク「よもぎクーラー」も用意されている。サウナで高まった体温と代謝に、よもぎのデトックス・抗炎症作用がやさしく寄り添い、内側から深く潤す感覚をもたらすドリンクである。

鞍掛山を望む草原で味わう「無の贅沢」
TAKIGAHARA SAUNAが建つのは、鞍掛山を望む草原の中という絶好のロケーションだ。ここでは風と鳥の声だけが聞こえる静寂の中で、「何もしない贅沢」を味わうことができる。
施設内の照明やBGMは極力抑えられ、月の光や風の温度、木の香りや水の感触など、自然そのものに感覚を研ぎ澄ませる設計となっている。都市の喧騒を離れ、自分と向き合う深い静けさを取り戻すことこそが、このサウナが目指す真の豊かさである。



サウナを通じて地域文化を未来に継承
サウナイデアは、単にサウナ施設を設計するだけでなく、地域の記憶と技術、素材の価値を未来へ伝えていく使命も担っている。滝ヶ原での取り組みは、サウナという現代的な器を通して、伝統的な地域文化を次世代に継承していく試みでもある。

このプロジェクトは、サウナが単なる温浴施設を超えて「地域を伝える装置」として機能することを実証している。建築と自然・文化の結節点となる空間づくりを実践することで、新しいサウナ文化の可能性を示している。
TAKIGAHARA SAUNA
所在地:石川県小松市滝ケ原町
特徴:康美青の石風呂、能登ヒバ・地元杉材のサウナ室、白山伏流水の冷水浴
付帯サービス:オリジナルアロマ、サウナ飯、サウナドリンク
TAKIGAHARA SAUNA公式サイト:https://takigahara.com/sauna/