商業空間デザインに特化した月刊誌「月刊 商店建築」は、2023年9月号を8月28日に発売する。今回の特集は、全国で人気の高まっている「サウナ」に焦点を当て、80ページ以上にわたって特集。デザイン性の高いサウナが多数掲載されている。各プロジェクトの写真や図面も掲載され、全国の話題のサウナを一気にリサーチすることができる。
今回の特集は、初めてサウナを出店する際にどのような人に設計を依頼すれば良いか悩んでいる方や、サウナを設計する際にどのような平面構成が適切か悩んでいる方、商業ビルにサウナを誘致したいが、どのような運営方式やデザインが差別化につながるか悩んでいる方などに役立つ資料となっている。
日本では2010年代後半から「サウナブーム」が起き、各種メディアやSNSでサウナ関連の情報を頻繁に目にすることができる。サウナ利用者は約2800万人いるとされており、2021年と2022年のコロナ禍で若干減少したものの、今年は再び増加傾向にあるといる。特にヘビーユーザーは減少しておらず、サウナは根強い人気に支えられている。昨今では、このサウナブームに合わせて、全国各地に多様なサウナ施設が誕生している。
今月号では、都市型の大型サウナやホテル・旅館に併設されたサウナ、移動型のサウナ、ワークプレイスに併設されたサウナ、個室型や会員制の高価格帯サウナなど、さまざまな実例を紹介。これらの施設は空間デザインの意匠性が高く、他の施設との差別化が図られている。また、インタビュー記事では、フィンランド大使館のラウラ・コピロウ氏に、フィンランド人がどのようなライフスタイルの中でサウナを楽しんでいるのかも詳しく聞く。
この特集は、サウナの企画や設計に携わる人たちにとって、資料性に富んだ保存版となるだろう。
各章の概要
PART1/宿泊施設をサウナで選ぶ時代が来た!「宿泊施設付帯型サウナ」
宿泊施設を選ぶ際に、サウナ設備のクオリティーを評価軸にする人が増えてきた。地方の老舗旅館やハーブ園に位置する「一棟貸し」のサウナ&客室など、魅力的なサウナを備えた施設が増えている。
PART2/もはや小さな建築だ「スタンドアロン型サウナ」
地方やリゾート地では、小さな建築として自立型のサウナをつくる試みが見られる。魅力的な造形を含めて、サウナ体験を楽しめるのが「スタンドアロン型サウナ」だ。
PART3/人がいる場所へ出向いてととのえる 「モビリティー型サウナ」
どんな場所でもサウナを楽しみたい人に向けて、バスやトラックを改装した「移動型サウナ」が登場している。海や山、キャンプ場など、人がいる場所へ出向いて特別なサウナ体験を提供する。
PART4/働く場所にサウナを併設し、仕事効率をアップしよう! 「サウナ with ワークプレイス」
サウナと仕事は相性が良いと言われており、オフィスやコワーキングスペースにサウナを併設するケースが増えている。サウナが働き方改革の一助となる可能性がある。
PART5/動線、空間演出、オペレーションから考える「個室サウナ」
個室を貸し切ってサウナを楽しみたい人向けに、高価格帯の個室サウナが各地に作られている。個室型サウナの設計や運営について、二つの事例を紹介する。
掲載プロジェクト(一例)
大阪サウナDESSE(設計:OSTR)
大阪・心斎橋商店街に誕生した温浴施設。約900平米に7つのサウナを備える。サウナ室は、畳が敷かれた茶室のようなサウナや、水風呂が入り込んだサウナなど、それぞれが異なる個性を持つようにデザインされている。そして、それぞれのサウナを巡る動線は、あえて複雑に計画しているのも特徴的。街のような風景に水が流れ、東屋のようなサウナが点在する、「庭のような建築」となっている。
サバス(設計:OSTR)
路線バスとして利用されていた車両を改造した移動型のサウナ。サウナ内の内装は、一度剥がして再構成しながらも、座席のレイアウトや窓の形状などはバスとしての雰囲気を濃厚に残しています。席の高さの違いが温度の違いを生むなど、バスならではのサウナ体験を作っている。サバスは、さまざまな土地に出向いて活用されることを前提に計画された。
The Hive(設計:KUROFUNE Design Holdings)
一棟貸しの宿泊施設と一体化したサウナ。富山・立山にのハーブをテーマにした複合施設「Healthian-wood」の中にあり、都会の喧騒から離れ、土や水、立山連峰などの自然の風景と向き合うための場所として考案された。建物は、蜂の巣をモチーフとした六角形の構造。その半分が土に埋まっているため、年間を通して快適な室内環境を保つ他、六角形断面形状が2つのサウナ室の熱効率を向上させている。立山連峰に由来する水を活用した水風呂には風景や空が映り込み、土地を感じるサウナ体験が提供される。
渋谷サウナス(設計:スナーク)
東京・渋谷に、鉄骨3階建てで新築したサウナ施設。総合プロデュースを手掛けたタナカカツキ氏は、サウナブームのきっかけを作ったマンガ「サ道」の著者で、日本サウナ・スパ協会が任命した「サウナ大使」でもある。
施設内には、8種9室のサウナ室と2種4箇所の水風呂、そして緑に囲まれた外気浴スペースを設けている。水深1400㎜ある水風呂は、立ったまま全身を冷やすことができ、頭まで浸かることもできます。ととのう仕掛けとして、フィンランドの森を連想させるミストの噴霧が定期的に行われているのも特徴だ。植栽もフィンランドの風景をイメージして、垂直に伸びる針葉樹を中心に植えている。
サナマネ / サザエ(設計:隈研吾建築都市設計事務所)
香川・直島にあるグランピング施設「SANA MANE」の中心に立つ。木材を利用した有機的な形状のサウナです。28㎜厚の合板を150段積み重ねて生まれた、「木の組積造」という、挑戦的な建築空間だ。壁の厚みを平均450㎜とすることで、断熱性や保温性といったサウナとしての機能面を満たし、外から見ると、陰影に富んだ表情を持っている。また温度と湿度も最適な状態に保たれるよう、強制換気による空気の流れを緻密に設計している。
西麻布salon + sauna(設計:サポーズデザインオフィス)
東京・西麻布に開業した会員制サウナとバー。既存ビルの1階に寿司屋、2階にサウナ、3階にバーが入居。設計は、茶室のように装飾を極力排した空間となっている。サウナに入り、ととのい、サウナ後の「サ飯」(サウナ飯)として1階で寿司を食べる。更に、食べた後は、3階でアートを鑑賞しながらお酒を飲むことができるという、高い滞在性を持った複合型の小規模ビルだ。
Bar Sauna(設計:ANEU)
「Bar Sauna」は、「ととのう、語らう」をコンセプトに、東京・代官山にオープンした、バーが融合した会員制の個室サウナ。芸能界屈指のサウナーとして知られる、オリエンタルラジオの藤森慎吾さんがプロデュースを手掛ける。
この施設は、富裕層をターゲットに据え、中でもサウナにこだわりを持つ客層にリーチするため、会員権を販売し、更に会員が利用するごとに利用料を支払うという運営形態。そのため、高額な会員権に見合う価値を、内装デザインでいかに演出するかが大きなポイントとなった。サウナ室にヒノキ、水風呂や休憩用のイスが置かれた「ととのいスペース」には石をふんだんに使い、壁面は左官で仕上げ、間接照明によって有機的なテクスチャーを浮かび上がらせている。
一般的に個室サウナでは、水風呂はなく、シャワーだけが設置されているところも多いが、ここでは、個室内に水風呂を用意している点も大きな魅力となっている。
今回の「月刊 商店建築」9月号〈サウナ大特集〉では、この他にも多数のサウナプロジェクトを収録。ポイントは、掲載されているサウナの運営形態や立地が多様であること、そして、それらの条件に合わせた最適解としての空間デザインが各プロジェクトで提案されていることだ。今後、まだまだブームが続きそうなサウナ業界。そうした中で、運営形態や空間デザインでいかに差別化を図っていくか、ヒントと情報を求めている方は、「月刊 商店建築」9月号が参考になるだろう。
月刊 商店建築 2023年9月号
発売日:2023年8月28日(月)
価格:定価2,358円(本体2,144円)
版型:A4
発行:株式会社 商店建築社