【銭湯VS】銭湯はなぜ残されるべきか──京都・山城温泉、林さんの30年と「次の担い手」への想い

by furosauna

裏方を支えるのは、若い力

山城温泉の特色の一つが、裏の学生寮に学生が住み込み、掃除を担当している点だ。学生寮は山城温泉が運営し、家賃・光熱費は無料。その代わり、週2回、深夜1時からの掃除を担う。「飲み会の後でも戻って掃除する学生もいます。しんどいって言ってますけど、やっぱり若い力がないと回らないんです」

大学の銭湯サークルに所属する学生が掃除の手伝いに来ることもあるが、掃除にはマニュアルがあり、林さんは「手抜きは絶対に許さない」と語る。「掃除の質にはこだわってます。うちは厳しいって有名みたいですよ。『山城は怖い』って(笑)」学生にとっては厳しさのなかにリアルな現場があり、林さんにとっては将来の担い手を育てる“実地訓練”のような意味もある。

年齢とともに「掃除できない自分」が現れる

銭湯経営には、資金面や設備維持といった課題が付きまとう。しかし、最も切実なのは「体力」だという。「48なんですけどね、数年前からほんまにしんどくなってきて。掃除のペースも自分で分かるくらい落ちてるんです」以前は学生の動きを見て「遅い」「甘い」と言えていたが、今はそうもいかない。自分が同じように動けないからだ。

「配管がやられたら、浴室全部を掘り返さなあかん。億単位のリニューアルが必要になる。でも、その前に、自分の体が限界を迎えるかもしれない」老朽化は施設だけでなく、経営者自身の身体にも確実に訪れる。

「自分のためにやってる。それでいいんです」

なぜ林さんは銭湯を続けているのか。その問いに対して、返ってきた言葉はシンプルだった。

「生活のためです。仕事ですから。自分のためにやってます」

近年、「地域のため」「文化の継承」といった銭湯経営者の“美談”が注目されがちだが、林さんはそれを一切口にしない。

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