【銭湯VS】時代の荒波に挑む銭湯運営──京都・源湯が挑む逆境と革新、そして固定観念との戦い

by furosauna

最終的には何店舗か携わっていきたい。 中村さんの未来予想図

今後の目標について尋ねた。「最終的には何店舗か見たいっすね」と中村さんは語る。それは、源湯だけでなく、他の銭湯の運営にも携わり、人と人との繋がりを作りたいという想いの表れでもある。

「1箇所にずっといれないっていう性格なのもあります(笑)。今日はちょっと大阪にーーとか、今日は奈良にーーとか。なんかこう移動してないとちょっと耐えれない性格なんです」

「銭湯を日本から消さない」というゆとなみ社の理念は、中村さんの中で、より具体的な目標に変わろうとしている。「銭湯って、ほんまに面白い場所なんですよ」。インタビュー中、中村さんは何度もそう語った。その言葉には、銭湯への愛情と、未来への希望が溢れていた 。

銭湯の可能性を信じて。源湯は何と戦っているのか

「銭湯ってやっぱ気持ちいい部分っていうか、なぜかリセットできる空間」と中村さんは銭湯の魅力を語る。

「例えば、休みの日に朝9時には起きるぞと思ってたのに、起きたらもう午後2時で『なんか最初っからリズム崩れてるな』みたいな日ってあるじゃないですか。点数的には今日20点やなみたいな日。そんな日でも、とりあえず一日の終わりにでかい風呂入ったらプラス30点ぐらいにはなると思うんです。

一日の最後、良かった日でもダメだった日でも、銭湯に来れば一日の点数がちょっと上がる、そんな場所であり続けたいって思ってます」

その言葉は、まるで、疲れた現代人の心に優しく寄り添う、温かいメッセージのようだ。

今回のインタビューを通して、銭湯の新たな可能性を感じることができた。しかし、源湯が戦っているものは、決して「時代の変化」という抽象的なものではない。それは、老朽化という現実、人々のライフスタイルの変化、そして何よりも、「銭湯はもう失われていく」という「源湯vs固定観念」の構図なのではないだろうか。

中村さんは、銭湯を「居場所」として捉え、地域コミュニティの灯を守ろうとしている。それは、単に銭湯という「施設」を守るだけでなく、人と人との繋がり、温かい交流という、銭湯が持つ「文化」を守ろうとする戦いでもある。

源湯の挑戦は、私たちに問いかける。私たちがこれまで「古い」と切り捨ててきた文化は、本来なら未来へと繋ぎ、新たな価値を与えなければいけなかったものなのではないだろうか。利便性、豊かさを求めた暮らしの先にもたらされた固定観念が、大事なものを失うことへと繋がっていくのかもしれない。

そして中村さんは今日も釜に薪をくべる。釜の中で燃える火が、人の繋がりの灯になることを目指して。


源湯 

〒602-8368 京都府京都市上京区北町580−6

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