京都市北区に位置する廃業銭湯「明治湯」が、「明司湯」として2025年春に復活リニューアルオープンさせるためのプロジェクトが始動した。このプロジェクトは、地元の若手実業家たちが中心となり発足した、「京都銭湯甦生プロジェクト委員会」の取り組み。廃業に追い込まれた銭湯を再生し、地域のコミュニティを甦らせるだけでなく、銭湯文化を新たな形で継承するという壮大な試みである。
京都銭湯文化の課題と「明司湯」再生への挑戦
京都市は「銭湯の聖地」とも称され、長きにわたり独自の銭湯文化を築いてきた。しかし近年、経営者の高齢化や利用者の減少、新型コロナウイルスの影響などで廃業が相次いでいる。2021年には、昭和30年頃に開業し地域に愛されていた「明治湯」も、老朽化を理由に惜しまれつつ閉店となった。
この状況を受け、地元不動産会社「ハイトラスト」の代表取締役・坂口祐司氏が「京都の銭湯を未来へ繋ぎたい」という思いを抱き、プロジェクトを始動。坂口氏の呼びかけに応じた若手実業家やクリエイターが集まり、「京都銭湯甦生プロジェクト委員会」を設立した。
京都銭湯甦生プロジェクト委員会
制作実行委員長/プロダクトオーナー | 坂口 祐司 氏(株式会社ハイトラスト 代表取締役) |
サウナ設計 | 和田 孝明 氏(株式会社Replus 代表取締役) |
アートディレクター | 佐藤 涼介 氏(earthcampus株式会社 代表取締役) |
建築設計デザイン | 半谷 喜久 氏(エントデザイン株式会社 代表取締役) |
企画スタッフアシスタント | 京都市立芸術大学 学生・ 京都芸術デザイン専門学校 学生 など学生多数 |
「銭湯2.0」の実現を目指して
このプロジェクトのコンセプトは「地域と、育む、銭湯」。銭湯を単なる入浴施設としてだけでなく、地域の人々が集い交流する「育む場所」として再定義する。プロジェクトのメンバーは、伝統的な銭湯文化の良さを残しながら、現代のニーズに応じた「銭湯2.0」の実現を目指している。
こだわりの設計と空間デザイン
プロジェクトにはサウナ設計の専門家である和田孝明氏や、アートディレクターの佐藤涼介氏、建築設計デザイナーの半谷喜久氏が参加している。新たな「明司湯」では、プライベートサウナのような快適で洗練された空間を提供することを目指している。また、京都らしい情緒と現代的なデザインを融合させ、地元住民だけでなく観光客にも魅力的な場所を作り上げる予定だ。
地域コミュニティの核としての役割
銭湯は古くから、地域の人々が裸の付き合いを通じて交流する場であった。子どもからお年寄りまでが集まり、生活の一部として親しまれてきた。この「銭湯文化」を継承しつつ、新しい価値を提供することで、地域コミュニティの核となる施設へと生まれ変わる。
また、「明司湯」は観光地としての京都の価値を高める役割も果たす。地元住民にとっての日常的な施設であると同時に、観光客には京都のローカルカルチャーを体験できる場所としても期待されている。
明司湯の未来に向けた展望
「明司湯」は2025年春のオープンを予定しており、完成後には地域住民と観光客を迎える新たなランドマークとなるだろう。京都銭湯甦生プロジェクト委員会は、最新情報を公式サイトやSNSで随時発信している。
地域の伝統を守りながら、未来に向けて新しい価値を創出する「明司湯」の再生プロジェクト。この銭湯が、京都の暮らしと文化をさらに豊かにする存在となることを期待したい。
明司湯(旧 明治湯):〒603-8224 京都府京都市北区紫野西藤ノ森町1