
御徒町の高架下で、屋久島の風が吹いていた。
「屋久島の風を再現したサウナ施設」と聞いた瞬間、テンションが振り切れた。
屋久島といえば、樹齢7000年を超える縄文杉が立ち並び、年間降水量が8000mmを超える、日本が誇る世界自然遺産だ。そこに吹く風を、御徒町の高架下サウナに持ってくる。しかも山手線の真下に。パナソニックが本気を出すと、地理の概念まで壊れるらしい。
でも行くまでは、ちょっとだけ「は?どういうこと?」という気持ちもあった。「屋久島の風を再現」という言葉の解像度が、頭の中でまだぼんやりしていたからだ。扇風機をおしゃれにしたもの?どデカい送風機?それとも屋久島の空気を瓶に詰めて持ってきた?

そして、高架下のサウナ「HUBHUB御徒町」に行ったのだ。屋久島を浴びた。5秒で理解。
山手線の真下にいるはずなのに、体中に屋久島の原生林の風が吹いていた!これは比喩じゃない!物理的な話だ!「ととのう風」は、扇風機の進化系でも、アロマディフューザーの親戚でもない!パナソニックが100年以上かけて積み上げてきた気流制御技術の、現時点での最高到達点だった!
「ととのう風」は、もはや「ひみつ道具」だった

突然だが、国民的アニメの青い猫型ロボット(青い自律型汎用ケアロボットによる運命決定論への介入と、多次元ポケットを用いた因果律の再構築アニメ)に出てくる黄色い服の少年の気持ちになって考えてほしい。
都市型サウナの最大の悩みは「外気浴の質」だ。排気ガス、騒音、そして屋外にスペースがないため屋内の休憩スペースしかないケースもある。せっかくサウナと水風呂でととのいかけているのに、外気浴スペースや内気浴スペースに来た瞬間に現実に引き戻される。あの絶望感、サウナーなら誰しも経験があるはずだ。
もし自分が黄色い服の少年なら、間違いなくこう叫んでいる。
「ドラ◯も〜ん!外気浴できないサウナ施設でも、本物の外気浴がしたいよ〜!なんとかしてよ〜!」
すると青い自律型汎用ケアロボットがお腹のポケットをゴソゴソやって、こう言うのだ。
「もう、しょうがないな〜のび◯くん。じゃあこれ、『とーとーのーうー風ー』!」

……という文脈で出てくるのが、パナソニック株式会社 空質空調社が開発した気流デバイス「ととのう風」だ。笑えるような話だが、体験してみると笑えなくなる。これは本当に、未来からやってきたひみつ道具だった!
そしてこの「ととのう風」装置は御徒町の高架下サウナ「HUBHUB御徒町」に導入され、サウナ体験の数値化実証実験が始まっている。実際に現地へ赴き、その「風」を全身で受けてきた。
パナソニックが屋久島まで飛んだ理由

まずこのデバイスの開発話を聞いて、シンプルに笑ってしまった。
担当者が実際に屋久島へ飛んで、現地の「気持ちいい風」のゆらぎをサンプリングしてきたのだ。「自然の風っていいよね」という話を、パナソニックは「じゃあ測りに行こう」で解決してしまった。エンジニアとしての正気を疑うレベルの行動力だが、その狂気が「ととのう風」を生んだ。
仕組みを説明しよう。パナソニックが100年以上培った気流制御技術を全部ぶち込んで、スリットから吹き出した風が周囲の空気ごと巻き込む「誘引気流」を作り出す。扇風機の風が体の一点を叩く「線」の刺激だとしたら、「ととのう風」は全身を面で包む「不可視の羽衣」だ。

さらにハイレゾサウンドスピーカーから可聴域を超えた森林音が流れ、脳みそを強制的にリラックスモードへ引きずり込む仕組みまで組み込まれている。風の強さが自然のように微妙にゆらぎ、体のどこか一点に当たって冷えるのではなく、全体がじんわりと静まっていく。
もはや聞こえるか聞こえないか分からない風音。それが自然そのものの演出となっている。
高架下の遊休地、限界まで振り切った

そもそもHUBHUB御徒町とは何か。三井不動産グループのShareTomorrowが手がける移動式ユニット活用事業で、JR山手線の高架下——遊休地として放置されていたデッドスペースにトレーラーハウスを持ち込んで作ったサウナ施設だ。
「二度と同じサウナは作らない」というポリシーを掲げているらしく、確かに施設を見れば振り切り方が伝わってくる。
用意されているサウナ室は2種類。
ウーラッコ(屋根裏)
ウーラッコは、茶室みたいな低天井の空間だ。最大の特徴はストーブが床に埋め込まれている点で、座ったままストーブを「見下ろしながら」セルフロウリュができる。立ち昇る蒸気が顔面直撃でダイレクトに全身を包む。囲炉裏を囲む感覚に近く、隣の人との距離が自然と縮まる設計になっている。温度は約80〜85℃。

ポルタ(階段)
対するポルタは、高さ3mのタワーサウナだ。階段状のベンチを登ると、「よっこいしょ」という言葉が自然に出る。上へ行くほど温度が跳ね上がり、90〜100℃の熱気が容赦なく牙を剥く。自分の限界温度帯をミリ単位で探りながら、黙々と自分を追い込む「没入」専用機だ。
どちらもこだわり抜かれた設計。これだけでも最高なのである。

「ととのう風」を浴びた瞬間の話をさせてほしい

サウナ→水風呂(14〜17℃、チラー完備)というプロセスを経て、外気浴スペースへ出る。
その瞬間、「ととのう風」が来た。
最初の感想は、「閉鎖空間なのに風が!」というシンプルな感想。サーキュレーターやエアコンもない。なのに風がある不思議。「ととのう風」の装置自体は隠れていて見えないため、本物の風そのものだ。「あ、涼しい」ではなく「え、森?」という気分になる。
風の気配が、完全に屋久島のそれだった。風の強さが一定ではなく、自然の風みたいに微妙にゆらいでいる。面で包まれているから、体のどこかが当たって冷える感じがなく、全体がじんわりと静まっていく。頭上では山手線がビュンビュン走っているはずなのに、体は完全に原生林の中にいた。

の◯太がドラ◯もんに頼んで手に入れたひみつ道具を使っている気分、とはまさにこれだ。「こんなの現実にあるわけない」と思っていたものが、目の前に普通に存在している。しかも御徒町の高架下で。
都市型サウナが長年抱えてきた宿命的な課題——「外気浴の質」を、パナソニックは「空気のプロ」として真正面から殴り倒してきた。これはもはやサウナの話というより、テクノロジーが自然をシミュレートして凌駕しようとする挑戦の話だ。
加藤医師に「問診」してもらった話

今回の実証実験のもう一枚看板が、サウナ専用スマートウォッチ「SHOWDOWN1」とアプリ「サの国」だ。心拍数変動(HRV)をリアルタイムで解析して、自分の「ととのい」を100点満点でスコア化してくれる。
そしてこの日、体験当日にSHOWDOWN1を開発した株式会社100plusのCEOであり医師の加藤容崇先生が実際に現場にいた!
加藤医師は日本サウナ学会代表理事を務めるサウナ医学の第一人者だ。実際に診ていただいたのだが、これがもはや問診だった。「ととのい値はどうでしたか」「心拍の変動パターンはどう感じましたか」という会話が、完全に診察室のそれになっている。サウナ施設のスペースで医師に問診される体験は、人生で初めてだ。

考えてみると、かつてサウナ体験は「なんとなくととのった気がする」という千年続いてきた曖昧な感覚の世界にあった。それを「ととのう風」という制御可能な風と、スマートウォッチによる生体データの可視化と、医師による医学的監修が三位一体で「エビデンスに基づくウェルビーイングの管理」へと変換しようとしている。これがバイオハッキングか…。
「ととのう風」を浴びたあと、加藤医師に数値を見てもらう体験は、妙な感動があった。今まで「感覚」でしかなかったものが、目の前で数字として現れ、専門家がその意味を解説してくれる。初心者なら「これが正解か」という安心感に、中上級者なら「スコアを更新したい」という探究心に火がつく。
高架下のゴミ捨て場跡地で、屋久島の風を浴びながら自分の心拍数変動を加藤医師と一緒にニヤニヤ眺める。客観的に見てかなりシュールな光景だが、これ以上なく知的で贅沢な時間だった。
「ととのう風」で、サウナが「娯楽」から「インフラ」になる日

最後にこの体験全体を振り返ると、一つの大きな転換点が見えてくる。
「ととのう風」という制御された自然体験と、医学的権威が監修したサウナ専門スマートウォッチ「SHOWDOWN1」による生体データの数値化と、こだわり抜かれたサウナ空間。この三つが揃ったとき、サウナはもはや「運と感覚に頼る娯楽」ではなくなる。テクノロジーによって再現・管理される「パフォーマンス向上のためのインフラ」へと変わっていく。
HUBHUB御徒町での実証実験は、将来的に家庭やオフィス空間に「確実に、再現性を持ってととのう」環境を実装するための壮大な社会実験でもある。ドラ◯もんに頼んで手に入れた「ととのう風」が、やがてどこにでもある日常の道具になる日が来るかもしれない。
今すぐ御徒町へ向かえ!高架下のデッドスペースで、最先端の科学があなたを「究極の静寂」へと転送する準備を整えている!

「屋久島まで飛んで風をサンプリングしてくる」というパナソニックの一手、冷静に考えると完全にやりすぎなんだけど、その”やりすぎ”が御徒町の高架下で本物の体験になってるのはすごい。サウナ界に「空気のプロ」が本気で参戦してきた瞬間を、リアルタイムで目撃している気分だ。
HUBHUB御徒町
- 施設名:
- 所在地: 東京都台東区上野5丁目10-6
- アクセス: JR「御徒町」駅 徒歩3分/銀座線「上野広小路」駅 徒歩4分/日比谷線「仲御徒町」駅 徒歩4分
- 営業時間: 10:00〜23:00(年末年始除く)
- 料金: ウーラッコ 90分貸切プラン 8,000円〜/ポルタ 120分貸切プラン 10,000円〜(完全事前予約制・人数・時間により変動)
- サウナ室: ウーラッコ 約80〜85℃(床埋め込み式ストーブ)/ポルタ 約90〜100℃(高さ3mタワー型)
- 水風呂: 約14〜17℃(チラー完備)
- アメニティ: フェイスタオル・バスタオル無料貸出、OSAJIスキンケア完備
- 特記事項: 水着着用で男女利用可・タトゥー利用可・トレーラーハウス構造
- URL:https://hubhub.jp/facility/okachimachi