北京五輪のエラーとサウナのもしも
——そして、G.G.佐藤さんと言えば、「世紀の落球」とも言われた2008年の北京五輪でのエラーですね。今ではSNSでネタにしまくるほどになっていますが、当時はかなり苦しまれてたと思います。
北京五輪のエラーは、やっぱり人生を変えた出来事でした。外野での落球ひとつで、試合の流れも、自分の評価も一変。何より自分自身が切り替えられなかったんですよ。頭の中でずっとリピート再生されて、抜け出せなくなった。

もし当時サウナを知ってたら、違ったと思います。サウナって強制的に極限状態を作り出すでしょ。熱さと冷たさで「もう無理!」ってところまで追い込まれて、やっと「生きてるだけで最高だ」って思える。そうやって強制リセットできてたら、きっともっと早く立ち直れてた。
五輪のエラーで落ち込んでいた僕に必要だったのは、それだった気がするんです。もしサウナで“強制リセット”できていたら、「まだやれる」って早めに前を向けたかもしれないですね。

——もし五輪の選手村にサウナがあったら、歴史は変わってたかも?
いやほんとに。もし当時の自分に声をかけられるなら「お前、テルマー湯行っとけ!冷たい水風呂入っとけ!」って言います(笑)。水風呂で凍えながら「生きてる!」って叫んでたら、また違う未来があったかもしれません。
でも、だからこそ今の僕は“逆境とサウナは相性がいい”って胸を張って言えます。失敗やプレッシャーを抱えている人ほど、サウナでリセットできると思います。
——サウナ=もしも装置。逆境を抱える全ビジネスパーソンにもぶっ刺さる。

引退後の迷走と「今ここ自分」
——引退後のキャリアにもサウナは効いてます?
引退後は「次の目標」を探して10年くらい迷走しました。でも全然見つからなくて、目標を持つことに疲れちゃったんです。

そんなときにサウナで「今、この瞬間」に集中する感覚を得られたんです。スマホも持ち込めないし、熱さや冷たさに向き合うしかない。そこから「今、ここ、自分」って考え方に切り替えられた。これが新しいキャリアにつながる大きな転換点になりました。
——「今、ここ、自分」って言葉、めちゃくちゃしっくりきますね。もはや「禅」の世界観かも。そういった瞬間に出会う場所はサウナ室内ですか?
僕の場合、アイデアが降りてくるのは水風呂ですね。冷たさで「もう無理!」ってなる瞬間に、ポンと大事なことが浮かんでくる。

昨年の話ですが、伊勢神宮で真冬の川に入る研修をやったんですよ。極限まで寒くて、脳が「危険信号」を発信してましたね。でもそんなとき、凍えきった状態で、ふっと「子どもの顔」が浮かんできたんです。その時に「ああ、自分は家族が最も大事なんだ」って心の底から思えた。肉体がギリギリの極限状態になると、余計なノイズが消えていって、自分にとって最も大事なものだけが残るんです。サウナの水風呂もそれに近い。仕事でも「あ、これだ!」って答えの出る瞬間がありますね。
——「プレゼン資料がまとまらない!」って悩んでる人、ひょっとしたらデスクより水風呂の方が解決早いかもしれない(笑)。
