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サウナ後の外気浴は「何もしない」のが正解、という話

外気浴などの休憩中にスマホを見ていないか。

サウナ室で温まり、水風呂で冷やし、外気浴で「休憩」する——この「休憩」という言葉が、外気浴の本質を隠してしまっている。外気浴は休憩ではない。ととのいが起きる場所だ

自律神経に何が起きているのかを知ると、なぜ外気浴中に「何もしない」ことがこれほど重要なのかが腑に落ちる。この記事では、その仕組みを全部説明する。

外気浴は「休憩」じゃない——ととのいの本番だ

サウナ後の外気浴は「何もしない」のが正解、という話

サウナ→水風呂→外気浴という流れを「温める→冷やす→休む」と理解している人が多い。その理解は半分正しく、半分ずれている。

外気浴は「休む」時間ではなく、「体が変化する」時間だ。サウナ室と水風呂で強く刺激された自律神経が、外気浴の間に大きく振れ戻る。この「揺り戻し」の瞬間こそがととのいの正体であり、外気浴はそのプロセスが起きる舞台だ。

「ととのいは外気浴で起きる」と言うと、「じゃあ外気浴さえすればいいのか」と思う人がいる。違う。外気浴だけで良いのではなく、サウナ室と水風呂で十分に自律神経を動かしておくことで、初めて外気浴での「揺り戻し」が大きくなる。振り子を大きく振るほど、戻りも大きい。その戻りを受け取る場所が外気浴だ。

外気浴中に起きている自律神経の変化

サウナ後の外気浴は「何もしない」のが正解、という話

外気浴中に体の中で何が起きているかを、研究データから整理しておく。

サウナ室に入ると交感神経が活性化する。心拍数が上昇し、血管が拡張し、体は「興奮状態」になる。水風呂ではさらに交感神経が刺激される——冷水への曝露は一時的な寒冷昇圧反応を引き起こし、心拍数と血圧が急上昇する。

そして外気浴へ。刺激から解放された体に何が起きるか。

Laukkanen らの研究(Complement Ther Med. 2019;46:31-38)では、心血管リスク因子を持つ93人を対象に、30分間のサウナ入浴(73℃)前後の心拍変動(HRV)を測定した。サウナ入浴中は一時的に迷走神経成分が低下したが、サウナ後のクールダウン期間中に低周波成分が有意に減少し(p<0.001)、高周波成分が有意に増加した(p<0.001)。

HRVの高周波成分は副交感神経活動の指標だ。つまりこの研究が示しているのは、「サウナ後のクールダウン(外気浴に相当する時間)に副交感神経が優位になる」という事実だ。

サウナ後の外気浴は「何もしない」のが正解、という話

さらに、同研究では安静時心拍数がサウナ前の77回/分から回復後には68回/分に低下したことも示されており、外気浴を含む回復期が自律神経バランスを良好に調整することを示唆している。

別の研究では、水風呂(冷水浴)では交感神経が再活性化すると同時に血管が収縮するが、その後の安静(外気浴に相当)によって副交感神経が有意に活性化し、「ととのう」と呼ばれる状態につながるとも報告されている。

外気浴で「何もしない」が効く理由——神経科学から説明する

サウナ後の外気浴は「何もしない」のが正解、という話

副交感神経が優位になろうとしているこの瞬間に、スマホを見るとどうなるか。

スマホの画面は視覚を通じて脳を刺激する。通知・SNSの更新・ニュースのヘッドライン——これらは情報処理の負荷をかけ、脳を「処理モード」に引き戻す。スマホのマルチタスクや常時通知は脳への認知的負荷を増大させ、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌増加と関連するという報告がある。ただしスマホ使用とコルチゾールの関係は研究によって結果が分かれており(Hunter et al., 2018では有意な変化なし、Riedl et al., 2012ではコルチゾール増加との関連を報告)、断定はできない。

サウナ後の外気浴は「何もしない」のが正解、という話

それでも、外気浴中にスマホを見ることが「副交感神経が優位になる状態の邪魔をする可能性が高い」という経験則は、多くのサウナーが実感していることだ。ととのいが深い日と浅い日の差が、外気浴中のスマホの有無と一致しているという体験談は枚挙にいとまがない。

もう一つ重要な点がある。「何もしない」は脳にとって積極的な状態だ。神経科学の分野では「デフォルトモードネットワーク(DMN)」と呼ばれる概念がある。これは脳が特定のタスクに集中していないとき——つまり「ぼーっとしているとき」——に活性化するネットワークで、自己参照的な思考・記憶の統合・創造的な発想に関与するとされている。外気浴中の「何もしない時間」は、このDMNを活性化させる時間でもある可能性がある。

「ぼーっとすること」は怠けではない。脳にとっての「片付けの時間」だ。

最大限ととのうための外気浴の環境づくり

「何もしない」の質を上げるための環境を整えることが、ととのいの深さに直結する。

外気浴場所の選び方

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外気浴で最も重要なのは「横になれるかどうか」だ。椅子に座った状態より、デッキチェアやリクライニングチェアで体の力を完全に抜ける状態の方が、副交感神経への切り替えが早い。体が重力に完全に委ねられる姿勢が、弛緩の深さを変える。

次に「風があるかどうか」だ。外気浴中に体表面に当たる風は、皮膚の温度センサーを刺激し、体の変化への感覚を鋭敏にする。

ただし、「外気浴」という名前にこだわる必要はない。外に出られない施設・天候が悪い日・冬の寒すぎる環境では、屋内の涼しいスペースで横になって休憩することでも、同様の効果は得られる。 重要なのは「場所が屋外かどうか」ではなく、「刺激を遮断して体を静かに休ませる時間を作れるかどうか」だ。

サウナ後の外気浴は「何もしない」のが正解、という話

実際、副交感神経への切り替えは屋内でも起きる。Laukkanen et al.(2019)の研究でも、回復期は屋外ではなく施設内での安静時間として計測されており、HRVの有意な改善が示されている。「外気浴スペースがない施設には行けない」という思い込みは必要ない。屋内でも、横になれる・静かである・スマホを置けるという3条件が揃えば、ととのいの本番は十分に起きる。

施設を選ぶ際は外気浴スペースの充実度を確認するのが理想だが、なければ屋内の休憩スペースを外気浴の代わりとして積極的に活用してほしい。

外気浴中の時間の使い方

サウナ後の外気浴は「何もしない」のが正解、という話

目安は5〜10分だが、時間より感覚を優先してほしい。「まだ変化が続いている」という感覚があれば、そのまま静かに座っていていい。「落ち着いた」という感覚が来たら、次のセットへ移るタイミングだ。

外気浴を「早く終わらせて次のセットに入りたい」と焦ると、副交感神経が十分に優位になる前に次の刺激を入れることになる。ととのいの深さを求めるなら、外気浴の時間を削らないことが最も重要な条件の一つだ。

スマホをどこに置くか

サウナ後の外気浴は「何もしない」のが正解、という話

基本的にはスマホを浴室に持ち込める施設は少ない。ただ、持ち込める施設であってもロッカーに置いてくるのが理想だが、難しければタオルの下に伏せて画面が見えない状態にするだけでも違う。「見ようと思えば見られる」と「存在を忘れる」では、注意の向け方が変わる。

外気浴の「質」が変わる3つの実践ポイント

知識を体験に変えるために、次のサウナから試せることを整理する。

① 1セット目の外気浴は「準備」だと思う

1セット目の外気浴は、体がサウナ環境に慣れる段階だ。「1セット目からととのおうとしない」という心構えが、外気浴を焦らずに過ごすことにつながる。2セット目以降の外気浴で、本番の変化が起きやすい。

目を閉じる必要はない。ただ、遠くを見る

目を閉じると逆に「ととのおうとしている」という意識が働いて焦ることがある。目を開けたまま、遠くの空や木の葉を漠然と見ているだけでいい。視野を広く、焦点を定めない——この状態が、先述のデフォルトモードネットワークを活性化させやすいとされている。

③ セットの最後を水風呂ではなくサウナで締めるという選択

睡眠効果を求める場合(記事#8で詳述)は最終セットをサウナで締めることを勧めたが、ととのいの深さを求める場合も同様だ。水風呂を最後にすると深部体温が下がりすぎて、外気浴での体の変化が起きにくくなる場合がある。2〜3セット目の外気浴こそがととのいの本番なので、最後のセットに向けて体を整えておく意識が重要だ。

外気浴、よくある質問

外気浴の効果とは何ですか?

サウナ室と水風呂で刺激された自律神経が、外気浴中に副交感神経優位の状態へと切り替わる時間だ。この切り替えの瞬間に「ととのい」と呼ばれるリラックス状態が生まれる。研究(Laukkanen et al., 2019)では、サウナ後のクールダウン期に副交感神経活動の指標であるHRV高周波成分が有意に増加したことが示されている。

外気浴の正しいやり方を教えてください。

好みにもよるが「横になれる・風がある・スマホを置く」の3条件を整うといいと外気浴だ。時間の目安は5〜10分だが、「落ち着いた」という感覚が出てきたら次のセットへ移るタイミング。外気浴を焦って短くすることは、ととのいの深さを削ることに直結する。

外気浴中にスマホを見てはいけないのはなぜですか?

副交感神経が優位になろうとしている時間に、スマホの画面が脳を刺激する可能性があるためだ。スマホの認知的負荷とコルチゾールの関係は研究によって結果が分かれており断定はできないが、「外気浴中のスマホがととのいを浅くする」という体験談は多くのサウナーが報告していることだ。

外気浴はサウナと水風呂の後に必ず必要ですか?

ととのいを体験したいなら、外気浴(または屋内での休憩)は必須だ。サウナ室と水風呂だけで外気浴をスキップすると、副交感神経への切り替えが起きにくく、ととのいの感覚が得られにくい。外気浴こそがととのいの本番の場所であり、スキップすることはととのいの仕組みの核心部分を使わないことを意味する。

外気浴はどのくらいの時間行えばいいですか?

目安は5〜10分だが、時間より体感を優先してほしい。「体がまだ変化している」感覚があれば続け、「落ち着いた」感覚が出てきたら次のセットへ。焦って短くするより、十分に時間を取ることがととのいの深さに直結する。外気浴を削るのはサウナ体験全体のROIを下げる行為だ。

「何もしない」が、一番難しくて一番効く

外気浴中に「何もしない」ことは、習慣として定着するほどに難しい。

スマホを手放す。予定を考えない。次のセットを焦らない。目を閉じなくていい、ただ遠くをぼーっと見ている——それだけのことが、ととのいの深さを決める。

副交感神経が優位になる「その瞬間」を受け取れるかどうか。それは外気浴の時間に何をするかではなく、何をしないかにかかっている。

次のサウナで、スマホをロッカーに置いてみてほしい。それだけで外気浴が別物になる可能性がある。

編集長

外気浴でも屋内の内気浴でも、とにかく頭をカラッポにすること!「今、ここ、自分」に集中して、マインドフルネスだ!


参考文献

[1] Laukkanen T, Lipponen J, Kunutsor SK, et al.
Recovery from sauna bathing favorably modulates cardiac
autonomic nervous system.
Complement Ther Med. 2019;46:31-38.
doi:10.1016/j.ctim.2019.07.023
PubMed PMID: 31331560

[2] Riedl R, Kindermann H, Auinger A, Javor A.
Technostress from a neurobiological perspective:
system breakdown increases the stress hormone cortisol
in computer users.
Bus Inf Syst Eng. 2012;4(2):61-69.
doi:10.1007/s12599-012-0207-7

[3] Hunter JF, Hooker ED, Rohleder N, Pressman SD.
The use of smartphones as a digital security blanket:
the influence of phone use and context on psychological
and physiological responses to social exclusion.
Psychosom Med. 2018;80(9):865-872.
doi:10.1097/PSY.0000000000000613
PubMed PMID: 30052579

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