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工場跡地に空前絶後のサウナ誕生!3月28日開業「サウナメッツァ大井町トラックス」の全貌レポ

工場跡地の地面の下には、今も水が湧いている

大井町という街の名前の由来を知っているか。

江戸時代、この地には湧き水が絶えない「大きな井戸」があった。それが「大井」の語源だとされている。水が豊富に湧き出るその土地は、人々の生活を支え、農業を育み、やがて産業の礎となっていった。

しかし時代が下るにつれ、大井町の顔は一変する。明治・大正・昭和の近代化の波の中で、この街は重工業の拠点へと変貌を遂げた。東芝の前身企業がここで産声を上げ、精密光学機器のニコンがこの地から世界へ羽ばたいた。蒸気と鉄とオイルの匂いが充満する工場群が、街の風景を塗り替え、かつての湧き水の記憶を地面の奥深くに押し込めていった。

工業が盛んになるとは、自然を失うことでもある。均一な工業製品を生み出すために、「不均一な自然」は排除されてきた。節のない木材、傷のない金属、臭いのない空間——それが「品質」の証明とされてきた歴史がある。

しかし、地面の下の水脈は消えていない。

その大井町のど真ん中、JR大井町駅に隣接する複合施設「OIMACHI TRACKS SHOPS & RESTAURANTS(大井町トラックス)」の4階に、2026年3月28日、都市型プレミアム・ウェルネススパ「サウナメッツァ大井町トラックス」が開業する。

「メッツァ(metsä)」はフィンランド語で「森」を意味する。工業地帯の高層ビルの中に、森が生まれようとしている。

サウナメッツァ大井町トラックス

このサウナを手がけた男——「ととのえ親方」松尾大氏

サウナメッツァのサウナプロデュースを手がけたのは、サウナクリエイティブ集団「TTNE」代表、「ととのえ親方」こと松尾大氏だ。札幌出身で、経営者や著名人など1000人以上をサウナにアテンドし、ととのう状態に導いてきたことからその異名を持つ。日本サウナ学会の設立、11月11日をサウナの記念日「ととのえの日」として日本記念日協会に認定させるなど、サウナ文化の社会的な定着に向けて精力的に活動を続ける、日本サウナ界の第一人者だ。

その松尾大が、東芝とニコンの街に「森」を持ち込んだ。その意図は、空間の随所に刻まれている。

サウナメッツァ大井町トラックス
今回は、ととのえ親方にご案内いただきました!

工業の街に「森の不完全さ」を持ち込んだ、サウナメッツァ男性サウナ2室の哲学

サウナメッツァの核となるのが、男性エリアに設けられた趣の異なる2つのサウナ室だ。それぞれがまったく異なる世界観を持ちながら、根底に流れるテーマは一つ——「この街の記憶と、本物の自然の共存」である。

トラムサウナ:停車中の電車を、電車内で眺めるという禅問答

一室目は「トラムサウナ」。室内に入った瞬間、思わず二度見する光景が広がる。座席、吊り革——完全に電車の車内を模したデザインのサウナ室だ。

しかしこれは、単なるユニークな内装ではない。窓の外を覗けば、JR大井町駅に隣接する「東京総合車両センター」——JR東日本の車両基地——に停車する本物の車両が見えるのだ。電車をモチーフにしたサウナ室の中から、本物の電車を眺める。この二重性、この入れ子構造は、ここでしか味わえない体験だ。工業都市・大井町の象徴たる鉄道を、蒸気と熱の中から眺める——その景色は、サウナ室でありながら、この街への深いリスペクトとして機能している。

サウナメッツァ大井町トラックス
サウナメッツァ大井町トラックス
時計もエイジングされていてレトロ。

さらに仕掛けがある。座席の背もたれには「押しボタン」が設置されており、それを押すとロウリュが起動する。蒸気を噴射するバルブはJAXAでも採用されているものだ。噴射された蒸気によってプロペラが回り始め、サウナ室全体を蒸し上げていく。

サウナメッツァ大井町トラックス
押すとおもしろいアナウンスも!どんなアナウンスかは行ってみてのお楽しみ。
サウナメッツァ大井町トラックス
このプロペラが思いのほかグルグル回る。

ここで面白いのが「熱の可視化」という仕掛けだ。本来、熱は目に見えない。温度が上がっても、空気が熱くなっても、それは感覚でしか確認できないものだ。しかしこのサウナ室では、熱が上がるほどプロペラが勢いよく回転し、その動きによって「熱の強度」が視覚的に伝わってくる。見えないはずの熱が、目の前で形を持つ。JAXAも認めた精密なバルブ技術と、熱を可視化するプロペラの組み合わせは、まさに工業技術の粋だ。大井町というインダストリアルな街の空気と、これほど見事にマッチしたサウナシステムは他にないだろう。

レトロな電車内デザインに最先端の宇宙技術が宿るという、このギャップもまた痺れる。

サウナメッツァ大井町トラックス
「ここにJAXAのバルブがあるんだよ!」という説明にも熱が入る。サウナだけに。
サウナメッツァ大井町トラックス
ここからブシャーっと出てくる。

ウォーリュケロサウナ:「欠点のある木材」をあえて選ぶ、反工業の美学

サウナメッツァ男性サウナの二室目「ウォーリュケロサウナ」こそが、ととのえ親方のプロデュース哲学が最も色濃く現れている空間だ。

一般的に、建材の選定においては均一で欠点のないものが好まれる。樹液が染み出た跡、節目、枯れによる変色——これらは「欠点材」として忌避されてきた。工業的な美学、つまり「均一であること」「傷がないこと」が価値とされる世界では、自然の木が持つ個性はむしろ「除去すべきもの」とみなされる。

サウナメッツァ大井町トラックス

しかしこのサウナ室は、その常識を真正面から逆転させた。

フィンランドの厳しい気候の中、数百年かけてゆっくりと成長したケロ材——樹液を出し、節を持ち、時に変色した、「不完全な」ままの木材——をドアノブに至るまでふんだんに使用しているのだ。「完璧な木材」ではなく、「本物の木材」を選んだということだ。

室内にはほのかに甘い香りが漂う。それはケロ材が本来持つ香り、人工的に加工・均一化することで失われてしまう原始の香りだ。樹液が出ること、木肌が変色すること——それはすなわち、その木材がかつて確かに生きていた証拠にほかならない。長い年月をかけて降り積もった雪の重さ、零下数十度の寒さ、短い夏の光——そのすべての記憶が、木の細胞の中に刻まれている。

樹液が滲み、水がつたう。それがサウナ室の”味”となり、エイジングされていく。サウナ室が育っていくという過程も楽しむことができるだろう。つまり、今日のサウナ室と明日のサウナ室は微妙に変わる。

サウナメッツァ大井町トラックス
ケロ材にずっと水がつたっている。
サウナメッツァ大井町トラックス
少し樹液が滲んでいる。これがいい味を作っていくのだろう。

工業地帯の高層ビルの中で、数百年を生き抜いた木の記憶を全身で受け取る。これは単なるサウナ体験ではなく、時間と自然への敬意の表明だ。大井町という「自然を失った街」で、最も本物の自然を感じられる空間——その逆説が、サウナメッツァのサウナ室の本質である。

サウナメッツァ大井町トラックス
この不均衡なケロ材を愛でるだけでも価値のあるサウナ室だ。

女性サウナ「ウーブンサウナ」:自然の香りは、雑多だから本物である

サウナメッツァ大井町トラックス

サウナメッツァ女性エリアのサウナ「ウーブンサウナ」は、香りと熱を複合的に楽しむ設計が施されている。

天井からぶら下げられたハーブ、背面のフラスコに詰められたハーブ群——視覚的にも独特な存在感を放つ空間だ。まるでオブジェのようにも見えるその光景は、他のどのサウナ室でも見たことのないスタイルだ。

そして中央には金色の円盤型サウナストーブ。セルフロウリュを行うと、水がフラスコに流れ込み、複数のハーブの香りと蒸気がサウナ室全体に解き放たれる。さらに座面にはボナストーブが内蔵されており、熱の多層的な包まれ方が他のサウナ室とは異なる感覚をもたらす。視覚、聴覚、嗅覚——すべての感覚が同時に刺激される空間設計だ。

サウナメッツァ大井町トラックス

ここで特筆すべきは「香り」の構造だ。ウーブンサウナで体験できる香りは、決して単一のものではない。複数種類のハーブが混ざり合い、蒸気と熱によって刻一刻と変化し続ける——それはまさに、本物の森の中で感じる香りの構造に近い。

そもそも「森の匂い」とは何か。フィトンチッド、土の腐植、苔、雨に濡れた落ち葉、木の樹脂——森の香りはこれらが複雑に絡み合った「雑多な混合体」だ。ウーブンサウナは、その「雑多さ」をあえて意図的に再現することで、都市の中に本物の自然体験を呼び込もうとしている。なお、このウーブンサウナからも、窓越しに停車中の電車を眺めることができる。自然の香りに包まれながら、工業の象徴たる電車を眺める——大井町という街のアンバランスが、サウナ体験の中に凝縮されている。

香りも撹拌されるだろう。
様々な香りのもとがオブジェのように並ぶ。

シックな浴室と、充実したサウナメッツァの水風呂・休憩エリア

サウナメッツァの浴室は黒を基調とした壁面に、青・赤・グリーンのライトアップが施されたシックな空間だ。工業地帯の夜を思わせるような重厚感の中に、色彩の煌めきが映える。

水風呂は男女ともに15〜16℃程度を完備。さらに男性エリアにはシングル(一人用)の水風呂も用意されており、サウナーとしては見逃せない設備だ。体をじっくりと冷やし、感覚を研ぎ澄ませる——その後の休憩タイムへの橋渡しを、この水風呂がしっかりと担う。

サウナメッツァは休憩スペースも妥協がない。男性浴室には通常の休憩椅子に加え、横になれる畳スペース、そして畳を使用した座面スペースと、多様な休憩スタイルに対応した設計となっている。外に出ることなく、浴室の内側でじっくりとととのえる「内気浴」の充実ぶりは、都市型施設として理想的な完成度だ。

サウナを超えた都市型リカバリー拠点として

浴室・サウナエリアだけでなく、施設全体のコンセプトも見逃せない。

ワーキングスペース、休憩エリア、レストランが一体となった「サウナメッツァ大井町トラックス」は、単なる入浴施設ではなく、都市で働く人間が心身を回復させるための拠点として設計されている。JR大井町駅直結という抜群のアクセスを活かし、仕事終わりに立ち寄り、サウナで整え、食事をして帰る——そんな「都市型リカバリー習慣」が、ここから根付いていくだろう。

大井町という街は、工業化によって自然を手放した街だ。しかしその代わりに、日本の産業を牽引する力を得た。今、その街に誕生するサウナは、失われた自然を工業的に「再現」するのではなく、自然の「不完全さ」「雑多さ」「生きた痕跡」をそのまま持ち込もうとしている。ケロ材の樹液も、複数のハーブの混じり合う香りも、均一化された美しさとは対極にある。

それが、ととのえ親方の答えだ。地面の下に流れる水脈のように、大井町にはもともと自然が宿っていた。ビルの4階に開業する「森」は、その記憶を地上に呼び戻そうとしている。

編集長

JAXAのバルブで蒸気を噴射し、プロペラで熱を可視化する——工業地帯のサウナでこれをやるのはもはや必然だったのかもしれない。東芝やニコンが育った街で、宇宙技術がロウリュに使われているという事実は、大井町の「ものづくりの魂」がサウナ室に乗り移った気がして震える。ととのえ親方、やってくれたで!

サウナメッツァ大井町トラックス

  • 所在地:東京都品川区広町2丁目 OIMACHI TRACKS HOTEL & RESIDENCE TOWER 4階
  • アクセス:JR大井町駅直結
  • 開業日:2026年3月28日(土)
  • サウナプロデュース:松尾大(TTNE株式会社 代表/ととのえ親方)
  • 男性サウナ:トラムサウナ、ウォーリュケロサウナ(2室)
  • 女性サウナ:ウーブンサウナ(1室)
  • 水風呂:15〜16℃(男性エリアにはシングル水風呂あり)
  • 休憩スペース:畳スペース含む充実した内気浴エリア(男性)
  • その他施設:ワーキングスペース、休憩エリア、レストラン
  • URLhttps://www.oimachi-tracks.com/shop-list/shops/detail/1042001/

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