
浅草の老舗銭湯「曙湯」が、「文化を沸かす銭湯」という新たなコンセプトのもと、2025年8月23日(金)にグランドオープンする。プレオープンは8月9日(金)から実施される。
株式会社yueが手がけるこのリニューアルプロジェクトは、衰退が進む銭湯文化、日本文化、地域文化の価値を再発見・再構築し、現代の暮らしの中で継承・発信していくことを目的としている。
銭湯の現状と「文化を沸かす」コンセプト
江戸時代初期の天正19年(1591年)に江戸の町で最初の銭湯が開業して以降、銭湯は単なる入浴施設にとどまらず、地域のコミュニティの要として重要な役割を果たしてきた。しかし、かつて全国で1万8000軒以上あった銭湯は、2024年時点で約1700軒まで激減している。
yueが新たに定義した「文化を沸かす銭湯」とは、ただ伝統を残すのではなく、銭湯という場所を起点に再び”文化の温度”を上げ、入浴を通して暮らしの中に自然に文化が染み込む環境をつくることである。
このコンセプトには3つの意味が込められている。
① 銭湯文化を沸かす 番台、下駄箱、浴室という日本固有の空間体験や、お湯の熱さ、裸のつきあい、湯上がりの談笑など、心と身体を整える”回復習慣”を大切にする。また、銭湯の「鏡広告」も復活させる予定だ。
② 日本文化を沸かす 暖簾やロゴ、館内サインなど、視覚的にも”粋”を感じさせるデザインを採用。日本の手仕事や美意識の象徴である若手作家の作品を展示・発信し、落語や演芸、和楽器など江戸由来の娯楽とコラボしたイベントの展開も検討している。
③ 地域文化を沸かす 商店街や老舗飲食店との連携イベントを実施し、中長期的には地元住民がふらっと集まり、語り合える”町の縁側”のような空間設計を予定している。

デザインリニューアルと地域への思い
新しいロゴ・のれんは、クラシック(伝統)とモダン(革新)が融合したデザインとなっている。曙湯の入り口に毎年美しく咲く藤の花の佇まいに着想を得て、”藤紫色”や花の柔らかさを感じさせる曲線や余白を取り入れた。地域の風景とともに歩む老若男女に愛される銭湯として、この土地ならではの季節感や記憶が宿るデザインとなっている。

リニューアルの背景
曙湯は1949年に浅草の地で創業し、宮造りの威風堂々とした外観と、富士山や東京スカイツリーの描かれた浴室の壁画で知られ、長年地域に親しまれてきた。しかし近年、後継者不足により廃業の危機に直面していた。そうした中、地域と文化の未来を見据える前任者と、yueのビジョンが合致し、本プロジェクトが始動した。
yueは、温浴施設の企画・開発を手がけるスタートアップとして、「Open to recovery – 疲労の抜けない日常生活に、回復する習慣を」というミッションのもと、全国の銭湯やサウナ施設をプロデュースしている。2025年2月には神奈川県座間市の「亀の湯」を再生し、「しずの湯」として再オープンさせており、今回はその第2弾として、観光経済の中心である浅草から文化再生の挑戦を行う。
主なリニューアル内容
今回のリニューアルでは、以下の改善が実施される。
- 営業時間拡大:朝6時~深夜1時までの長時間営業に対応
- VI(ビジュアルアイデンティティ)の刷新:ロゴやのれんデザインをアップデート
- 銭湯広告導入:鏡広告の活用により、地域企業の発信拠点に(時期未定)
- 電子決済・Wi-Fi導入:利便性と快適性を向上
- ドリンク・読書スペース:オリジナルドリンクや漫画・雑誌を用意し、滞在価値を向上予定(時期未定)
- 伝統文化展示:アート作品や伝統工芸を通じた文化発信(時期未定)
- 地域イベントの場:ワークショップ、落語会など地域連携の文化拠点へ
柿落としイベント開催
グランドオープンに先立ち、8月21日(木)19時から地域企業の方々や協業候補者、メディアを招いた「柿落としイベント」を開催予定である。本イベントでは、コンセプトを体現する動画の初公開を行うほか、来場者の交流の場を設け、浅草の新たな銭湯の可能性を見つけられるイベントとなる。なお、柿落としイベント当日は入浴はできない。
曙湯
住所: 東京都台東区浅草4丁目17-1
営業時間: 6:00~25:00(定休日:第2火曜) ※プレオープン期間(8/9〜22)は15:00〜24:00
料金: 大人550円(中学生以上)、中人180円(小学生)、小人80円(未就学児)
決済方法: 現金/電子マネー/QRコード決済
公式HP・SNS: 8月上旬公開予定